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2018.1


第377回 モーツァルティアン・フェライン例会 2018年1月20日
 
 

 事務局レター【第250号】/2018年1月

 【編集者】澤田義博/松永洋一/高橋徹/大野康夫/笠島三枝子 

 

●1月新年会(第377回)のお知らせ 

会員によるお話と演奏 第16回

2018年1月20日(土) 午後2時(午後1時30分開場)

   お茶の水クリスチャンセンター416号室

 会費:¥2000(会員・一般共)

お話の部

1 澤田義博  新年のご挨拶
   今年も宜しくお願い申し上げます

2 今関博文  モーツァルトと私

3 富田昌孝  クラリネット五重奏奏

4 塩津 巌   自己紹介+α 

5 堀尾 藍   Mozartと私 

6 山崎博康 季刊誌第100号の編集後記~辻 邦生~

      ~休憩~ 

    演奏の部

1 大野康夫 ギター独奏 ギターで弾くモーツァルト K6メヌエット、ロンドン楽譜帳からK15Cメヌエット他

2 堀尾 葵  ピアノ独奏  K2メヌエット

3 松永洋一  バス独唱
   歌劇「魔笛」より 「この神聖な殿堂には」「恋人か女房か」(ピアノ伴奏:中村 麻耶)

4 笠島三枝子  ソプラノ独唱
   歌劇「フィガロの結婚」より伯爵夫人のアリア(ピアノ伴奏:真部 淳)

5 田中 進   バリトン独唱
   歌劇「フィガロの結婚より」フィガロのアリア「もう飛ぶまいぞこの蝶々」(ピアノ伴奏:真部淳

6 笠島・田中  2重唱
      歌劇「ドン・ジョヴァンニ」よりドン・ジョヴァンニと ツェルリーナの2重唱(ピアノ伴奏:真部)

7 真部 淳
   ピアノとお話モーツァルトと調性 その2

 8 全員で合唱  Ave verum corpus ニ長調 K618 (ピアノ伴奏:真部淳)

 司会と会場準備   高橋 徹
 企画進行  真部 淳 高橋 徹

 

 

 例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051

 

 


●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)

2月17日(土曜日)黒岩 悠氏  ♪ピアノリサイタル♪ 場所:代官山教会チャーチ・ホール
 チラシ:その1 チラシ:その2

3月24日(土)森垣桂一氏

4月21日(土)田辺秀樹氏

5月・6月   久元祐子氏ピアノリサイタル または 高橋徹副会長

7月14日(土)加藤浩子氏

9月 8日 (日)上野優子氏ピアノリサイタル

10月     樋口隆一氏 

 

 


♪会員の皆様へのお知らせ♪

 ★2018年2月17日 黒岩悠ピアノリサイタルチケット販売の御案内
 前売りチケットを販売中です。全席自由席 ¥3,500円です。
1月20日新年会での販売のほかに電話予約、取り置き、当日お支払いも可能です。以下の電話番号にご連絡下さい。詳細はチラシをご覧ください。
お問い合わせ
澤田:090-2223-8101 高橋:090-4661-7525 松永:090-1682-3496

 ★季刊誌「モーツァルティアン100号記念号」販売の御案内
1冊\1,500円にて販売を致します。

 購入方法①
高橋:090-4661-7525までお電話頂き、お名前、御希望の数量をお知らせ下さい。
 後日、季刊誌と代金振込先口座情報を記した紙を同封して送付します。
お受け取りになりましたら、速やかにお振込をお願い致します。(送料は、当会で負担致しますが、振込手数料は各自の負担となります。)

 購入方法②
例会会場にて、例会当日販売を致します。
お支払いは、現金、後日振込どちらでも結構です。(現金払いの方がお得です。) 

 

 


♪ 12月例会報告(第369回 2017/12/23) ♪

「大司教コロレドはいつモーツァルトを許したか?―1780年代のザルツブルクにおけるモーツァルト受容」 慶應義塾大学 西川尚生教授)

 今回の例会は年の瀬を締めくくるに相応しい西川先生のご講演だった。先生は昨年ザルツブルクに1年滞在され、国際モーツァルテウム財団を拠点に、大聖堂や聖ペテロ修道院のアーカイヴ、またレオポルト・モーツァルトの故郷であるアウグスブルクやモーツァルト親子とゆかりの深いランバッハ修道院などで、モーツァルトの作品の手稿譜の調査をなさり、久々の当会でのご講演となった。
 音楽研究家の舞台裏の一端を覗かせて頂くことができ、我々フェライン会員にとって大変興味深かった。今回は今までのモーツァルト研究やモーツァルト関連の書物でほとんど触れられることのなかった、1780年代(つまりモーツァルトのウィーン移住後)のザルツブルクに焦点を当ててのお話となった。主たるポイントは次の通りである。 

 

 

 1.ウィーン移住後のザルツブルクとの関係
 (1)1781年のコロレド大司教との決別後、1783年のモーツァルトのザルツブルク一時帰郷までの間は、ザルツブルクではモーツァルトの曲は、確証はないが、殆ど演奏されていなかったのではないかと言うのが、西川先生の推論である。
この期間のザルツブルクにおけるモーツァルトの曲の演奏記録は殆ど残っておらず現在確認されているのは1782年のハフナー交響曲の原曲セレナードの初演、同年4月のリタニアの演奏(K.125)、1783年7月末~10月末の一時帰郷時の聖ぺテロ修道院での「ハ短調ミサ」初演。以上3曲のみである。
 因みに「ハ短調ミサ」の奉納の目的が、帰郷の遅れのためか、当初の結婚祈願から安産祈願に変わっている点も注目される。しかし、最近の研究では、このミサ曲はウィーンでの演奏も視野に入れていたのではないかと考えられている。
 (2)その後、1784年の「後宮」のマカルト広場の新宮廷劇場におけるザルツブルク初演はコロレドの管轄外と言う意味で興味を惹く。
 (3)一方、モーツァルトはウィーン時代に新作ばかりを演奏していたのではなく、ザルツブルク時代に作曲した旧作(昔の作品)を、きわめて頻繁に演奏していた。父親に楽譜を送ってもらった旧作が、ウィーン時代のモーツァルトの重要なレパートリーの一角を占めていたのである―この点は意外に知られていない。具体的には、「戴冠式ミサ」、イ長調交響曲(K.201)、ポストホルン・セレナードの交響曲稿、更にピアノ協奏曲(特にK.175、K.271「ジュナミ」、K.365「2台のピアノのための協奏曲」)等々である。

 2.ザルツブルク大聖堂の教会音楽資料

 (1)現存資料の内、主に大聖堂で使用された筆写パート譜は全26曲ある。
 (2)多くのパート譜にモーツァルトやレオポルトの補足、修正が見られる。
 (3)時には、いくつかのパート譜が補充される事がある。
そうした追加パート譜を調べる事により、作品の再演時期を推測できる。特にK.220(雀ミサ)、K.258、K.275の3曲のミサについて、パワーポイントによる詳細なご説明があった。かつて、アラン・タイソンがモーツァルトの自筆譜に使われている5線紙の透かし模様を全て調べ、従来の作曲年代が大幅に書き替えられたが、同じ方法論が、近年では筆写楽譜にも適用されている。
 (4)モーツァルトがミサ曲を再演する際に、初演にはなかったパートを新たに作曲していたという事実は大変興味深い。 

 

 

 3.その他の1780年代前半の楽譜資料

 (1)「ヴェスぺレ」K.321の筆写パート譜はもともとランバッハ修道院が所蔵していたものだが(現在はアウグスブルク国立・市立図書館所蔵)、モーツァルト作品の筆写譜としては異例―レオポルトと共同で筆写しているコピストは「ザルツブルク写譜家目録」に収録されていない極めて珍しい人物(先生は「コピストX」と称された)。しかも通常の筆写譜とは異なり、レオポルトと完全に分業している。コピストXは主に音符を書き、レオポルトはその他のテンポ表示等全てを筆写している。この筆写譜の作成年代を今回明らかにされたことは先生の重要な発見である。
 (2)更に、先生はK.258の筆写譜をランバッハ修道院で発見なさり、筆跡鑑定により、K.321と同様に、レオポルトとコピストXが作成したことが判明した。過去「新モーツァルト全集」では資料的価値が低いとみなされていたが、そうではなかった事が明らかになった。この点も重要な成果である。
 (3)コピストXはランバッハ修道院寄贈用にレオポルトに臨時に雇用された可能性が強い。(4)筆写者を区別する際、インクの色も重要な手掛かりとなる。
 (5)現在、聖ペテロ修道院は全部で11曲のピアノ協奏曲のパート譜を所蔵しているが、現在これらの研究に先生は没頭されている。

 4.結論

 (1)1781年のコロレドとモーツァルトの決裂から1783年のモーツァルトの一時帰郷までの間は、少なくとも大司教直轄の場ではモーツァルトの作品の演奏が限定ないし禁止された事もありうるというのが先生のご意見。但し資料の欠如により立証は困難
 (2)モーツァルト自身も自分の名前がコロレドの耳に入らないように気を遣っていた。
(3)然し乍ら、レオポルトは1780年代前半にモーツァルトがウィーンで作曲した作品を可能な限り演奏したと考えられる。文字資料が殆どない現状だが、レオポルトが熱心にモーツァルトの作品の筆写譜に取り組んでいたという点はかなり強い状況証拠と言えそうである。
(4)1780年代前半のザルツブルクにおけるモーツァルト受容の転換点は1783年の一時帰郷だったと言える。この間にモーツァルトは宮廷関係者との積極的交流に努め、音楽活動を通じた名誉回復にも努力した(例:ミヒャエル・ハイドンの代役として作曲したK.423,K424)。
 (5)一方、コロレドも1784年の「後宮」初演に列席し、「これは本当に悪くない作品だ。」(澤田注―「非常に良い」との意味)と称賛した。―こうした雪解けの兆しと大聖堂用の教会音楽の追加パート譜の作成時期の一致は偶然ではないというのが先生のご意見である。 以上

なお、ご講演の際使用された曲は次の通り。クリスティ指揮「ハ短調ミサ」のキリエ。アーノンクール指揮のK.321  「ヴェスペレ」のラウダーテ・ドミヌム。  K.271「ジュナミ」第1楽章、フォルテピアノ:スホーンデルヴルト、オケ:クリストフォリ。           

             (文責:澤田 義博) 

 

 

 

 ●例会・懇親会 写真コーナー

 今回の懇親会場は銀座ライオン・恵比寿ガーデンプレイス グラススクエア店で、西川尚生氏を中心に飲み会に早変わり。ビールで乾杯後、楽しく質疑・応答、懇親が行われた。 懇親会においては、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかなひとときを過ごすことが出来た。   

 

 


 

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2017.12

第376回 モーツァルティアン・フェライン例会 2017年12月23日
 
 

 事務局レター【第249号】/2017年12月

 【編集者】澤田義博/松永洋一/高橋徹/大野康夫/笠島三枝子 

 

●12月例会(第376回)のお知らせ 

演題:「大司教コロレドはいつモーツァルトを許したのか ―1780年代のザルツブルクにおけるモーツァルト受容―」  お話:西川尚生氏

 日時:2017年12月23日(土)午後2時(午後1時30分開場)

 会場:日仏会館501号室(恵比寿駅東口から恵比寿ガーデンプレイス方面へ徒歩10 分) 

 例会費:¥3000(会員・一般共)


――― お話:西川尚生氏

 昨年、国際モーツァルテウム財団の訪問研究員として、1年間ザルツブルクに滞在しました。同地の大聖堂アーカイヴや聖ペテロ修道院の図書館には、モーツァルト親子が演奏に使った当時の筆写パート譜がそのまま残されており、私はそれらを包括的に調査・研究する機会に恵まれました。今回は、その成果の一部をご紹介したいと思います。
  周知のように、1781年5月、ザルツブルク大司教コロレドと決裂したモーツァルトはウィーン移住を決意しますが、故郷との関係がこれで絶たれてしまったわけではありません。彼は1787年まで健在だった父レオポルトと頻繁に連絡をとり合い、旧作の楽譜を取り寄せる一方、ウィーンで作曲した新作を故郷に送りつづけ、レオポルトは息子の作品の演奏・普及につとめました。その結果、ザルツブルクは1781年以降もモーツァルト作品の受容の場として、ウィーンに次ぐ重要性を保ち続けたのです。
1782年の《ハフナー交響曲》K. 385の原曲セレナードの初演や、1783年のモーツァルトの一時帰郷の際の《ハ短調ミサ曲》K. 427の初演は有名ですが、これは当時演奏された作品のごく一部であり、ザルツブルクにおけるモーツァルト作品の受容の全貌は、これまで明らかにされてきませんでした。
  今回の講演では、残された楽譜資料をもとに、1781年以降のザルツブルクにおける、モーツァルト作品の演奏状況の再構築を試みたいと思います。その際、当然ながら問題になるのが大司教コロレドとの関係です。モーツァルトは一時帰郷の際、自分が大司教によって逮捕拘禁されるのではないかと恐れていましたが、そのような状況のもと、大司教が直接管轄する大聖堂や宮廷内で、モーツァルトの作品はどのように扱われたのでしょうか。
  大聖堂で近年発見された《ハフナー交響曲》の筆写パート譜や私がザルツブルク近郊のランバッハ修道院で発見した《ミサ曲》K. 258の筆写譜(レオポルトが同修道院に献呈したもの)など、新資料にも言及しながら、1780年代のザルツブルクにおけるモーツァルト受容、および大司教との関係についてお話しする予定です。 

 

 

 例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場二次会場:銀座ライオン・恵比寿ガーデンプレイス グラススクエア店

 

 

●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)

2018年1月20日(土) 新年会

2月17日(土曜日)黒岩 悠氏  ♪ピアノリサイタル♪ 場所:代官山教会チャーチ・ホール
 チラシ:その1 チラシ:その2

3月24日(土)森垣桂一氏

4月21日(土)田辺秀樹氏

 

 

 


♪会員の皆様へのお知らせ♪

 ★モーツァルティアン100号記念号は好評につき、 例会会場で1冊1500円で販売します。

★2018年2月17日 黒岩悠ピアノリサイタルチケット販売の御案内
 前売りチケットを販売致します。全席自由席 ¥3,500円です。12月23日の例会での販売のほかに電話でのご予約、取り置き、当日お支払いも可能です。
 以下の電話番号にご連絡下さい。詳細はチラシをご覧ください。

お問い合わせ
澤田:090-2223-8101 高橋:090-4661-7525 松永:090-1682-3496

 ★季刊誌第101号 原稿募集のお知らせ
第100号記念号は皆様のご協力により年刊2017として発行することができました。第101号以降は通常の季刊誌とすることが11月理事会で決まりました。次号は18年3月の発行。原稿締め切りは1月末です。
モーツァルトに関する随想、旅行記、演奏会評などふるってご寄稿くださるようお願いいたします。写真、カットも大歓迎です。送付先は編集担当山崎まで。メールはhyrynx@gmail.comです。 

 

 


7月開催の会員総会で承認された新理事メンバー
 ホームページの「モーツアルティアン・フェラインのご案内」より
名誉会長:若松茂生
 会長:澤田義博
 副会長:松永洋一、高橋 徹
 理事:大野康夫、山崎博康、小川恒雄、真部淳、笠島三枝子、澤田正彦、山田健二 
 監事:山本博幸
 事務局委員:佐藤梓
 顧問:久元祐子、田辺秀樹
 名誉顧問:石津勝男、倉島収、川口ひろ子

 

 


♪ 11月例会報告(第368回 2017/11/18) ♪

演題:「W.A.モーツァルトとM.レーガーに見るユーモアの共通性」
お話:伊藤 綾氏(鹿児島国際大学・国際文化学部音楽学科・准教授)

 マックス・レーガーは、1873年3月19日バイロイト近くのブラントで生まれ、1916年5月10日43歳で心臓発作によりライプツィヒで没した、作曲家・ピアニスト・指揮者である。
  モーツァルトとレーガーは出生地も活躍した年代も異なっているが、中年で死亡したこと、ユーモアに富み、筆まめであったことなどの共通点がある。
  モーツァルトとレーガーの手紙には、双方とも、ユーモアや駄洒落(だじゃれ)、エロス、言葉遊びが散りばめられている。レーガーは手紙(1902.1.31)で、「私のユーモアはグロテスクな性格で、大抵そこでさらけ出される『病的に』陽気な言動は、私自身に不快な思いを起こさせる」と書いている。 

 

 

 作品の中で活かされた言語センスの例として、モーツァルト《フィガロの結婚》KV492 の第3幕、スザンナと伯爵の二重唱(第16番)で、ダ・ポンテの台本にはない掛け合い部分を取り上げる。
  一方、レーガーの例として歌曲《上品な契約》(Op.62 No.16 )を取り上げる。クリスティアン・モルゲンシュテルンの詩(1897年)への作曲で、5回登場する歌詞「ナイチンゲールNachtigall」の基本リズムとそのヴァリエーションに、こだわりとセンスを感じる。
  モーツァルトに関するレーガーの言葉には、「私が 神のような手で荒涼の地を整理し、ワーグナー、リスト、R.シュトラウスをももたらしたモーツァルトの生まれ変わりとなる事など、誰も望んではいない」(1904.8.24)がある。
  レーガーのモーツァルト受容に関しては、彼の行った800回のコンサートのうち、モーツァルトを作品は41回しか取り上げなかった。内容にも大きな偏りがあり、特に室内楽曲は《ヴァイオリンソナタ第40番》KV454のみであった。 

 

 

レーガーが編曲したモーツァルト作品は3作品であるが、そのうち、1914年にマイニンゲン宮廷楽団に献呈した《モーツァルトの主題による演奏曲とフーガ》Op.132を解説した。
 同曲の成立過程は、1914年3月16日にブライトコプフ&ヘンデル社からモーツァルト原典版の《ピアノソナタ・イ長調》KV331を 取り寄せ、着想を書き込んでいる。
 同年5~7月に作曲し、初演は1915年1月8日にレーガー自身の指揮によりヴィースバーデンで行われた。管弦楽と2台のピアノ用の編曲に加えて、4手連弾版も自身で作曲しており、3か月間という短期間に集中して作曲している。 

 


モーツァルトKV331 第1楽章とレーガー《モーツァルトの主題による演奏曲とフーガ》の構造と冒頭4小節を提示し、2作品を比較した。第3変奏でイ短調に転調する点は同じであるが、レーガーの第1変奏ではアーティキュレーションの違いがみられ、第2変奏では逆行形・反行形を用いて作曲している。
 第4・第5変奏ではシェーンベルクの無調性を感じさせる変奏であり、第7・第8変奏はロマンティックな色調を織り込ませた変奏曲で、最終のフーガには壮大なオーケストレーションを含んでいる。
  レーガーはこの作品に関して、1914年10月3日の手紙で、「素晴らしい、モーツァルト・ヴァリエーションはオーケストラの中で素晴らしく響かなくてはならないのだ!
  このスコアはたいへんな努力によって作り上げられた。各音符は厳密に響きを『計算し尽くして』書かれているのだ」と記述している。 

             (文責・松永 洋一) 

 

 

 

●例会・懇親会 写真コーナー

 今回の懇親会場は、いつもの「デリ・フランス」お茶の水店に戻り、趣旨に賛同する有志一同で、講師の伊藤 綾氏を中心に飲み会に早変わり。ビールで乾杯後、楽しく質疑・応答、懇親が行われた。 懇親会においては、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかなひとときを過ごすことが出来た。   

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2017.11

第375回 モーツァルティアン・フェライン例会 2017年11月18日
 

 

 事務局レター【第248号】/2017年11月

 【編集者】澤田義博/松永洋一/高橋徹/笠島三枝子/大野康夫 

 

●11月例会(第375回)のお知らせ 

演題「W.A.モーツァルトとM.レーガーにみるユーモアの共通性」    お話:伊藤綾氏

 日時:2017年11月18日(土)午後2時開演(1時30分開場)

 会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分) 

 例会費:¥2500(会員・一般共)


 講演の概要:
  昨年没後100年を迎えたドイツ人作曲家マックス・レーガー(1873~1916)は、J.S.バッハからR.シュトラウスに至るまで、あらゆる作曲家の作曲手法を研究し、自らの手法と融合させた。
 研究対象の中にはW.A.モーツァルトも含まれ、その結果《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》(作品132)が作曲された。また、モーツァルトとレーガーの間には、人間的にも音楽作品的にもユーモアの点で多くの共通点が見られることは興味深い。
 本講演ではふたりの作曲家のユーモアの共通性について紹介するとともに、それがそれぞれの作品で、具体的にどのように結実していったのかを見ていきたい。 

 


 例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051

 

 


●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)


12月23日(土) 西川尚生氏
            場所:日仏会館501号室(恵比寿駅東口から恵比寿ガーデンプレイス方面へ徒歩10 分)
            二次会場:銀座ライオン・恵比寿ガーデンプレイス グラススクエア店

1月20日(土) 新年会

2月17日(土) 黒岩 悠氏 ♪ピアノリサイタル♪  場所:代官山教会チャーチ・ホール 

 

 

 

 モーツァルティアン・フェライン10月例会(第374回)報告

 江端津也子ピアノリサイタル(2017年10月22日)

  今月の例会は、モーツァルティアン・フェラインにとっては「聖地」とも言える、原宿のカーサ・モーツァルトで開催された。折しも、突然の衆議院選挙に超大型の台風襲来というダブルパンチに見舞われ、受付で待つ私は、激しい雨の様子をうらめしい気持ちで眺めていた。 
ところが、次々とやって来るお客様は、「凄い雨ですねえ~」と傘をたたみながらも、笑顔の方が多いのに驚いた。皆さん、リサイタルを心待ちにしていたのが良くわかる。心配をよそに、会場はほぼ満席。熱気と緊張感に包まれたサロンに、江端さんが登場して、リサイタルの幕開けとなった。 

 

 

オープニングは、モーツァルトのオペラ「魔笛」より、「何と素晴らしい音楽」を江端さんご自身がピアノ用に編曲したもので始まった。良く知られたメロディーをカーサ・モーツァルトのベヒシュタインピアノで演奏すると、この楽器の特徴とも言える透明な響きによって、一気に「魔笛」のメルヘンの世界へ引き込まれてしまう。江端さんの演奏は、原曲の持つ個性を損なう事がない。技術をアピールしたり、華美な装飾・即興を抑制した「趣味」の良い演奏で、やや緊張した会場の雰囲気をなごませてくれた。

  2曲目は、モーツァルトの「グラーフの歌謡主題による8つの変奏曲ト長調K24」である。1766年に作曲され、全ての変奏がテーマと同じト長調の4分の2拍子であり、リズム変奏の形を取る。テンポは、アレグレットを中心に進行するが、第7変奏でアダージョになって変化を付けている。江端さんは、この第7変奏で非常に優雅な響きを聴かせてくれた。そして、最後は軽やかに駆け抜け簡素ながらも親しみやすいこの曲の魅力を存分に楽しむ事ができた。

  3曲目は、前半の目玉と言って良い、モーツァルトの「ピアノソナタ イ短調K310」である。モーツァルトにとって短調の曲は、極めて少ないが、その中でもこの曲は、めったに自分の感情を作品に反映させないモーツァルトが絶叫しているような曲である。
 江端さんは、第1楽章の冒頭から緊張感に満ちた演奏。左手で刻む8分音符にのった付点リズムのテーマから時々、ため息をつくように立ち止り、やがて16分音符で乱れる思いを流れるように表現していた。決して、感情にまかせて突っ走るのではなく、1音1音を大切にした演奏に好感が持てた。
 第2楽章では、かなりゆっくりと始まったヘ長調の美しいメロディーが印象的。中間部では不穏な感情から嘆きに満ちた激しい曲調へと変化する所などモーツァルトの特徴である「突然に見えていかにも自然な転調」にぴったりな演奏であった。
 第3楽章プレストで江端さんの演奏は、悲しみに暮れながら駆け抜けていくが、中間部での天国的な優しさも忘れられない。 

 

 

  休憩を挟んで、後半は、ハイドンの「アンダンテと変奏ヘ短調」で始まった。1793年に作曲したピアノ曲。
モーツァルトの死を悲しんで作曲したという説もあるらしい。悲痛な感情の高ぶりを見せるヘ短調の主題Aと昔日を懐かしむようなヘ長調の主題Bが現れた後、交互に変奏が進んでいくA-B-A’-B’-A”-B”-A-コーダの形を取る。
 江端さんは対照的な2つの主題を良く捉えており、変奏に入ると、スタッカート、シンコペーション、トリルとリズムの変化を軽やかに表現していた。主題が再現された後のコーダの部分は、まるで、ベートーヴェンのピアノソナタの様な激しさ。フォルティシモのオクターブや重音、スケール、アルペジオが続き、非常にドラマチックになったかと思うと、最後は除々に弱音へと収束して消えるように静かに終わった。曲の起伏の激しさを良く捉えていた様に思う。「ハイドンもこんな曲を書いたんだ!」新たな発見をした瞬間だった。 

  次は、クープランの2つのへ長調の小品からである。
  最初の「修道女モニカ」は、バロック的な装飾音が全編に現れるが、この特徴を江端さんは自然な形で表現していた。中間部で右手による上行、下行のスケールも滑らかで心地よい。前曲と対照的でプログラムの流れとしても興味深く聴く事ができた。
  2曲目の「ティク・トク・ショク」は快活なロンドである。一貫して16分音符がせわしなく動く中で、左手による旋律が美しい。江端さんは、単調になりがちなところを実に表情豊かに生き生きと演奏してくれた。 

  続いては、フォーレの曲を2曲。江端さんは、日本フォーレ協会の会員でもあり、フォーレの音楽に対しても造詣が深い。
  「夜想曲第5番変ロ長調」は、1884年作曲である。ゆったりと始まる冒頭Aは、夜を思わせる優しい曲想に溢れている。江端さんは、緩やかな曲線を描くように滑らかに演奏していた。中間部Bに入ると一変して、やや悲しい激しい嬰ハ短調になる。ダイナミックな演奏は、Aとのコントラストが見事。そして冒頭Aに近いA’となってまた滑らかになりコーダを迎えて静かに終わった。

  最後は、フォーレの「即興曲第3番変イ長調」である。1883年に作曲された。江端さんの左手の心地よい16分音符の和音にのって、右手のメロディーは華やかだ。しかもかなり広い音域を上下しての演奏で即興の感じが良く出ている。中間部では、瞑想的な雰囲気が醸し出されながら転調を繰り返し、最後は華やかにフィナーレを迎えた。

  大きな拍手が会場全体を包む中、アンコールは、この日誕生日を迎えた江端さんが同じく誕生日のリストの作品から選んでくれた。「4つの小さなピアノ作品1865より第4曲アンダンティーノ」、それからモーツァルトに戻り、映画「アマデウス」で目隠し演奏で有名な「ピアノ小品K33B」、本日の第1曲「何と素晴らしい音楽」、「メヌエットヘ長調K2」と弾いて頂き、会場は更なる拍手に包まれた。

  足元の悪い中、お集まり頂いたお客様の熱意と、それに応えようと素晴らしい演奏をしてくれた江端さんのおかげで大変盛り上がった例会となり、外の天気とは裏腹に清々しい気持ちで会場を後にする事ができた。
  最後にお忙しい中、リサイタル開催に向けてこまめに連絡を頂き、当日も主役として御活躍頂いた江端さんに厚く御礼申し上げたい。  (文責:高橋 徹) 

 

 

 

●例会・懇親会コーナー

 今回の懇親会は、台風接近のため、残念ながら中止となった。

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