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5月例会(第392回)のお知らせ                                 
日時: 2019年5月18日(土)
午後2時開演 (午後1時半開場)
会場: お茶の水クリスチャンセンター811号室
(JR御茶ノ水駅下車・徒歩3分) 
例会費: 3,000円 (会員・一般共)
お話: 海老澤 敏 氏
演題: モーツァルトとヨーゼフⅡ世
 ―ヴィーンのモーツァルトをめぐる新解釈―
要旨:モーツァルトは1781年ヴィーンに移住し、この楽都では実務的な音楽家(例えば宮廷楽長)の役に就かず、フリーな音楽家として、演奏に作曲に活躍した。これは実は当時の皇帝ヨーゼフⅡ世の、直接の意図であったことを示している。近年のヨーゼフⅡ世解釈を音楽面についても実証したいと思う。 

(当日、海老澤先生支援団体のビデオ収録が入る予定です。)
<会場:お茶の水クリスチャンセンター地図>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております
会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051

新会長挨拶
澤田義博前会長のご推薦を受けまして、モーツァルティアン・フェライン第4代会長を仰せつかりました、松永 洋一と申します。
 3月例会コンサートのマリステラ・パトゥッツィ氏と上野優子氏のリサイタルのような素晴らしい企画は、私の能力ではとても実現できるものではありませんが、会員数増加を第一目標として励んでいきたいと思います。
 名誉会長に就任されます澤田前会長より、ご指導ご鞭撻をいただきながら、皆様のアイデアも出来るだけ活かしていきたいと存じますので、「この先生の講演を聞きたい」等のご要望がございましたら、お申し付けください。

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今後の例会予定 (OCC:お茶の水クリスチャンセンター)
6月15日 (土)田村和紀夫氏 (初回)
青山学院大学・大学院講師・音楽学 OCC811号室
7月13日(土)山崎 太郎氏 (初回) 東京工業大学 
リベラルアーツ研究教育院 OCC415号室
9月21日(土)宮谷 理香氏 ピアノリサイタル (初回)
代官山チャーチホール 
10月26日(土)加藤 浩子氏 OCC415号室
11月16日または30日(土)西川尚生氏 OCC415号室
12月(日未定)久元 祐子氏 ピアノリサイタル
2020年1月18日(土)新年会 OCC416号室
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第391回例会報告(2019.4.20)
 「クラリネット協奏曲 イ長調(K.622)をめぐって」
講師:田辺秀樹(一橋大学名誉教授・当会顧問)
 器楽曲では最愛の曲であるクラリネット協奏曲に、なぜかくも心惹かれるのかを、私なりに探ってみようと思う。
 モーツァルト最後の器楽曲であり、彼の自作目録では日付の記入がないものの、1791年10月7日には完成し、10月16日にプラハ国民劇場でアントン・シュタードラーによって初演された。前段階としてバセットホルンのための協奏曲の第1楽章(199小節分)K.621bがト長調で作曲されていたが、より低い音が出るA管の楽器を作成したシュタードラーのためにイ長調で書き直したと推測される。
 マンハイムのオーケストラでは早い時期からクラリネットが使用されており、1778年12月3日の父に宛てた手紙では「フルートとオーボエにクラリネットが加わると、シンフォニーにどれほど素晴らしい効果がもたらされるか信じられないくらいです」と書き送っている。アントン・シュタードラー(1753-1812)はウィーン時代のモーツァルトの親友で、フリーメイソンの会員でもあり、自ら楽器の改良にも取りくんだ。モーツァルトの死後、数年間モーツァルトのK.622の自筆譜を持ち歩いて各地で演奏したが、貴重な自筆譜を質屋に入れたとも言われ、自筆譜は失われてしまった。
 モーツァルトがイ長調で作曲した曲は、意外に少なめである。
  K.622の特徴としては、カデンツァが無く、即興や装飾は主題に戻る前のフェルマータ部分に限られること、主題のカンタービレ的性格、絶妙な主題の展開や転調、長調と短調の繊細な交錯、気分の揺れ動きなどにあると言えよう。しばしば現れる下降音型にことのほか情感が込められているように感じられ、この曲特有のどこか脱力したような哀切さをもたらす。広い音域を上下するソロ・クラリネットの動きも、この楽器の音色の魅力をフルに生かしている。あらゆるクラリネット奏者たちが、モーツァルトのこの曲とクラリネット五重奏曲を称賛してやまないのも、もっともなことである。
 モーツァルトが宮廷作曲家に任命されて以降の最後の4年間について、常に意欲的かつ前向きに飽くなき創造を続けたとするクリストフ・ヴォルフの見解(『モーツァルト、最後の四年』[礒山雅訳])は、説得力のある卓見と思う。とはいえ、K.622ともなると、大きな仕事を終えた満足感、いまやことさら「前向き」には頑張らないモーツァルト、ひたすら簡潔で美しい音楽を書こうとした「音楽職人」としてのモーツァルトが前面に出ていると思う。
 第2楽章は夕日の情景、人生をなつかしく振り返るような深い孤独、どこか悟りきったような人生への惜別が感じられ、第3楽章はふっきれたような軽み、快活さ、力が抜けた、まさに「重さが浮かび、軽さが沈む」という表現が相応しい。
 そのほか、同時代の作曲家達(ヨーゼフ・ハイドンなど)のクラリネット協奏曲との比較視聴、A.アインシュタイン、A.ゲオン、太平洋戦争中の音楽ファン、高橋英郎、高橋英夫、井上太郎らのK.622についてのいくつかの言及の紹介、クラリネット奏者・四戸世紀氏への質問と回答の紹介、K.622が使われた映画(「愛と哀しみの果て[1985年・米]」/「父パードレ、パドローネ[1977年・伊]」)の該当部分の視聴も行った。
 質疑応答の後、恒例のピアノ演奏では、ウィーンに春が訪れた喜びを歌った2曲を披露された。
1.プラーター公園の春(R.シュトルツ作曲)
2.ジーファリングの春(J.シュトラウス作曲)                      (文責:松永 洋一)
 

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2019.6

6月例会(第393回)のお知らせ 
日時: 2019年6月15日(土)
午後2時開演 (午後1時半開場)
会場: お茶の水クリスチャンセンター811号室
(JR御茶ノ水駅下車・徒歩3分) 
例会費: 2,500円 (会員・一般共)
お話: 田村 和紀夫 氏
(青山学院大学・大学院講師・音楽学)
演題: 『フィガロの結婚』の新機軸と世界観
―テキストと音楽のアナリーゼ―
要旨: 1784年、革命前夜のフランスで、ボーマルシェの演劇『フィガロの結婚』が大ヒットした。新しいリブレットを探していたモーツァルトは直ちに目をとめ、オペラ化した。しかし、もとの台本にただ音楽をつけただけではなかった。原作は練り直され、新たな場面が加えられ、さらにモーツァルト独自の美学が秘められた。かくして画期的にして永遠の規範ともいうべき傑作が生まれた。
『フィガロの結婚』の傑作たるゆえんはどこにあるのか。実証的な分析から解き明かし、魅力を再発見する。
例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております
会場:「デリ・フランス」お茶の水店・℡03(5283)3051

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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今後の例会予定 (OCC:お茶の水クリスチャンセンター)
7月13日(土)山崎 太郎氏 (初回) 東京工業大学 
リベラルアーツ研究教育院 OCC415号室
9月21日(土)宮谷 理香氏 ピアノリサイタル (初回)
代官山チャーチホール 
10月26日(土)加藤 浩子氏 OCC415号室
11月30日(土)西川 尚生氏 OCC415号室
12月14日(土)久元 祐子氏・永峰 高志氏 リサイタル
        セレモアコンサートホール武蔵野
2020年1月18日(土) 新年会 OCC416号室
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新企画 :モーツァルトをとっておきの映像で楽しむ会 
日時:2019年8月X日 13:30~16:30 (7月上旬決定)
場所:麻布区民センター講習室 
(港区六本木5-16-45 電話03-3583-5487)
趣旨: モーツァルトの名曲の映像を65型の液晶ディスプレイと上質な音質で鑑賞する会を企画しました。フェライン会員の方でなくても参加自由です。曲当てクイズ、指揮者の真似事をするコーナーも設けました。映像は私が長年撮りためたNHKの放送が主ですが、市販のDVDもご紹介します。その数が余りにも多いため、現在選曲中です。紹介しきれなかったものは今後フェラインの例会でテーマを絞ってご紹介することも考えております。
会費は室料と機材運搬費の合計額(¥7,100+α)を、参加者数で均等割りした金額とさせて頂きます。
担当: 山田 健二
★予定プログラム
1.    モーツァルトのすごいところは何か?    
あらゆるジャンルに名曲を残した(らららクラシック編)
2.    ジャンル別名曲紹介 (順未定、曲目選定中)
①    ソナタ: ピアノ・ソナタ K.331 K.545(ランラン)
ヴァイオリン・ソナタ
②    協奏曲(ピアノ、管、弦):
ピアノ協奏曲(バレンボイム他)、フルートとハープの為の協奏曲、クラリネット協奏曲(フレスト他)、ホルン協奏曲(バボラーク)、フルート協奏曲(パユ)
③    室内楽曲:
ディヴェルティメント K.136、K.138、フルート四重奏曲(宮殿での映像)
④    交響曲: 第35,36,38,39,40,41番(アーノンクール他)
⑤    教会音楽: 戴冠ミサ(カラヤン=ローマ法王)
レクイエム(コリンディビス)、アベ・ヴェルム・コルプス
⑥    オペラ: フィガロの結婚・序曲とアリア(ベーム来日公演版)
⑦    歌曲:: すみれ
3.    モーツァルト作品の曲当てクイズ: 
小学館/モーツァルトアーカイブを利用
4.    歌劇「魔笛」序曲の指揮:
ネビル・マリナーが振ったライブ映像を対象に全員で指揮の真似をする
*終了後、近くのレストランで食事会を予定しています。自由参加で、場所は未定です。
第392回例会報告 (2019.5.18)
お話: 海老澤 敏 氏
演題: モーツァルトとヨーゼフⅡ世
―ヴィーンのモーツァルトをめぐる新解釈―
 私は70年余にわたりモーツァルトを研究しており、関連する蔵書も多数所蔵している。これまでの自書ではヨーゼフII世との関係について充分触れていなかったので、今回の講演で取り上げてみたい。
 共同統治を行っていたマリア・テレジアが1780年に没し、ヨーゼフII世が単独統治を開始しているが、モーツァルトは1781年にウィーンにやって来たので、モーツァルトはヨーゼフII世と共に生きたと言えるだろう。
 歴史的にオーストリアはオスマン・トルコと戦争した後、プロイセンとも対立関係にあり、当時の風刺詩が残っている。ハプスブルク家は、反プロイセンの立場でブルボン家と繋がりがあり、当時のオーストリアとフランスの関係は密接であった。
ヨーゼフII世と音楽の関連を記した本は殆どなかったが、デレック・ビーレスの著書「ヨーゼフII世」(ケンブリッジ・2009年)「18世紀ヨーロッパに於ける改革と啓蒙」(ロンドン・2005年)では啓蒙思想の基にした政策を立てたことや、E・マホフスキーの著書「革命家皇帝ヨーゼフ二世」(藤原書店・2011年)ではお忍びでボヘミアを旅行した等の逸話が残っている。
 父親が皇帝の侍医であったスヴィーテン男爵は1734年に生まれ、1803年に亡くなったが、ウィーン時代のモーツァルトと重要な関係にあった。政治家でもあったスヴィーテン男爵にウィーンに来たモーツァルトの世話をするように言ったのは、ヨーゼフII世であったと考えられる。つまり、ヨーゼフII世はウィーンにやってきたモーツァルトに、すぐに着目していたと言える。この頃モーツァルトはコロレード大司教に仕えていたが、ウィーンに来るよう大司教から呼びつけられたモーツァルトは、1か月間無償で働いた後大司教と大喧嘩し、その後もウィーンに留まった。
 ヨーゼフII世は音楽好きで、音楽家の人事を自ら行い、1778年頃にはイタリア人歌手をウィーンに呼んだりしている。また1770年代後半、ドイツ語オペラを創らせているが、この頃までのジンクシュピールは宮廷オペラでは無かった。1782年作曲した《後宮からの逃走》K.384が、この運動の締めくくりとなった。
 サリエリとモーツァルトの関係は書簡や映画では悪く言われているが、二人は《オフィーリアの全快に寄せて》(モーツァルトの部分はK.477a)を共作しており、決して仲が悪かった訳ではない。このオフィーリアとは、当時名声を博していたソプラノ歌手ナンシー・ストレースのことである。
 演劇的ジンクシュピール《劇場支配人》K.486はサリエリのオペラと共にシェーンブルン宮殿のオランジェリーで共演されているが、私が学長を務めていた1989年、国立音大でこの二つの作品の世界初の再演を行なった。
 ヨーゼフII世はサリエリを宮廷楽長にしたが、モーツァルトに関してはウィーンで自由に活動させる、というのが彼の直接の意図であったと考えている。
=休憩後、ロバート・レヴィンによるフォルテピアノ(ヴァルター・モデル)演奏DVD視聴(2006年・東京文化会館収録)
1.プレリュードとフーガ ハ長調 K.394 
2.ロンド イ短調 K. 511
 1781年のクリスマス・イヴ、モーツァルトはヨーゼフII世に呼び出され、当時ウィーンを訪れていたエカテリーナII世の息子のロシア大公夫妻の前でクレメンティと競演した。ヨーゼフII世とエカテリーナII世との往復書簡集が出版されているが、書簡集でお互いに「親愛なる弟よ」「親愛なるお姉さん」と呼び合っており、親密な関係にあったことがわかる。
 ヨーゼフII世は1790年2月20日に世を去った。後を継いだ弟のレオポルトII世はモーツァルトを閑職に追い込み冷遇した。(サリエリも同様であり、仲が悪かった訳ではない。)
 1790年に弦楽四重奏曲「プロシア(プロイセン)王第3番」K.590を作曲したが、その後モーツァルトはウィーンでの存在意義を失って行った。
 結局のところ、ヨーゼフII世とモーツァルトは親しい関係にあった。ヨーゼフII世は音楽的帝王だったと言えるだろう。
 【質疑応答】
質問1:モーツァルトはクレメンティをけなしていたが、それではなぜ《魔笛》の序曲にクレメンティのクラヴィア・ソナタから借用したフレーズを使っているのか?
回答1:あの日クレメンティが弾いたピアノ・ソナタ Op.47-2から借用したと考えられるが、クレメンティは1800年代になって出版した楽譜の冒頭に、その事を記載した。クレメンティは、モーツァルトの素晴らしさを回想している。
質問2:モーツァルトとサリエリの関係について
回答2:1780年頃には行き違いがあったが、私は気にしていない。
質問3:ヨーゼフII世の劇場改革では、ドイツ語オペラは《後宮》で終わってしまったが、イタリア・オペラに敵わなかったのか?
回答3:ヨーゼフII世が居たからこそ、モーツァルトは《フィガロの結婚》は書けたのだし、《ドン・ジョヴァンニ》をプラハで上演できたことも、ヨーゼフII世の意志が働いたのではないか。
質問4:ヨーゼフII世とモーツァルトとの奇跡的出会いについて
回答4:ヨーゼフII世は音楽史上、特別な皇帝であった。ヨーゼフII世がいなければ、モーツァルトは開花しなかったであろう。一般的にはなかなかいない君主であった。
質問5:モーツァルトのヨーゼフII世への献呈曲はないか?
回答5:当時は出版が遅れることが多く。はっきり記載された楽譜は無いようだ。レオポルトの書簡には記載が無い。
質問6:ヨーゼフII世がボーマルシェの《フィガロの結婚》の作曲・上演を許した訳は?
回答6:政治的意図は無かったと考えられる。
(文責:松永洋一)

 

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お詫びと訂正
季刊誌第105号(6月1日発行)の表紙タイトル「MOZARTIAN 104」は「MOZARTIAN 105」の誤りです。確認が不十分でした。お詫びして訂正いたします。
編集人 山崎博康

 

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